DWの出世作、豪ABC-TV(日本のNHKみたいなところ)ドラマ、Seachangeです。15時間分(DWが出演する回分)の長丁場、せっかくなので一話ずつ感想をまとめて行きます。
第1話:「Something Rich and Strange」
都会(メルボルン)でバリバリと仕事をこなす、主人公ローラが、充実した生活と思っていた所から一転して、夫の裏切りが発覚、仕事での昇進がなし、息子は学校から放校と踏んだり蹴ったりの状況に陥ります。
そこで彼女は人生を建て直そうと、会社を辞め、かつて家族で素晴らしい休暇を過ごしたパール・ベイに移り住む事を決めます。
そこでは新たなる出会い ― 悪徳不動産屋(いかにも! な)や、ダイバー・ダン(運命の相手?) ― があり、トラブルがないわけではないけれど、パール・ベイでの生活が”良いもの”になることを予感させて終わり、というドラマの1話目としては魅力的かつ手堅く作られています。
このドラマを見ていたら、考えていたよりずっとローラに感情移入して見ている事に気が付きました。そこで上に書いた「そういう時ってあるんだよ! ローラ」というコメントになるわけです。ローラの身の上に起こった事は、誰かが死んだり、重病にかかったり、破産したり、とかそういう極端にドラマチックな事ではないけれども、彼女の性別と世代に見合った煩いゴト(仕事上の不調とか、パートナーとの不和とか、子供に関する悩みとか、)は当人にとっては十分にしんどいできごとで、しかもそういう煩いゴトが同時期に重なってやってくると、これはもうメゲてしまう訳で。
ローラは生真面目でエネルギッシュで、多分、今まで自分の思うようにやってきた人なんじゃないかと思います。つまり「努力すれば夢がかなう」的な部分でこれまで成功してきた人。忙しくて、他人からは余裕がないように見えていたとしても、本人としてはおそらく、「今の生活に不満がない、ってことはないけど、そこそこ充実してるかしらね」という感じだったのではないかと思います。ですから彼女がへこんだ、一番の理由は表面的な夫の裏切りや、昇進できないことではなくて、その根っこにあるもの ― これまでの自分の生き方や、がんばりを否定されている ― 事なんじゃないかと思うのです。つまり、「自分のがんばりがただ空回りしていた」とか、「自分の努力だけではどうにもならないことがある」という事を分からされてしまった、という事がローラには一番の衝撃で、ローラをして「私(たち)変わらなきゃ!」と叫ばせ、メルボルンからパール・ベイへと方向転換する大きな要因になったのではないかと思います。
まあ人間そうそう、性格なんて変わりませんから、パール・ベイで彼女のその奮闘ぶりがどう作用するのかまた彼女と関わる事でパール・ベイの住人たちがどう変わるのかとかSeaChangeというドラマの進行自体が楽しめそうだなあ、と思いました。
しかし、After the Deluge やBabiesを見た時も思ったのですが、この制作陣は30〜40代をメインにしたドラマ作りがなんというか見せてくれますね。日本人である私ですらそう感じるのですから、豪のこの世代の方たちには本当にウケるような気がしました。
さて、このドラマのタイトル[SeaChange]ですが、目覚ましい(急激な)変化,変貌(へんぼう)という意味。とにかく「明確な大転換」という意味合いで良く使われる単語だそう。これはシェークスピアの「テンペスト」で初めて使われたということです。ローラにとってのまさしく「大転換」そして、それが海辺の街、パール・ベイで起こるという意味合いを含めてのタイトルなんでしょう。そして、この第1話のタイトルが「Something Rich and Strange 」なんですが、これがまさにTempestの中でsea-changeに続けて使われている言葉なんですね。「 But doth suffer a sea-change/ Into something rich and strange.」となるわけで、ああっ もうっ! 向こうのエンターティメントに「聖書」と「シェークスピア」と「マザー・グース」は必須、とは聞いてましたけど、こんな所まで〜(涙)うーん、厳しいっです。