Cyrano De Bergerac / MTC2005

その2:嫦娥さんによるDW遭遇記






メルボルンでのCyrano観劇の際、幸運にもDavid Wenham氏本人に逢うことができました。 舞台そのもの以外のことはメディアにもあまり情報がないようなので 私が見たDavidの様子を書いてみました。 なるべく“客観・詳細”を心がけたつもりではありますが、 そこはやはり平静とは言いかねる状態の自分の目を通したDavid観察記です。 いろいろ偏ったり、おかしな主観がはみだしているところもあると思いますが、 その点はあらかじめご了承ください。


ソワレ終演後、舞台の余韻に浸る間もなくstagedoor前へ。 終了時刻は23時過ぎ、かなり遅めです。 そのせいなのかもともと習慣がないのか 現地の方で出待ちをする人はほとんど見当たりません。 待っているのは自分を含めた日本人ファン、10人ほどでしょうか。

Stage Door
Stage Door付近 


Cyranoの舞台は本当によかったので、残る望みは“ひと目素のDavidを拝めたら”。 例えば、通り過ぎがてら自動ドア越しに軽く手を振ってくれるとか、もうそれだけで十分。 そう念じていたら、約15〜20分経過したところでDavid登場。本当に逢えてしまった。 決して熱狂したり嬌声があがったりするわけではないけれど、 場の空気が一気に高揚するのが感じられます。 彼は最初からファンサービスのつもりで出て来てくれたようです。 ささっと身支度をして急いできてくれたのかしら?と良いように解釈。 「H〜i」と笑顔でのんびり近づいて来るDavid、 周りに警備員や劇場の人の姿もなく、本当に普通に一人でお出まし。 一瞬目が釘付けになって呆けてしまいました。 やっぱりあるんですね、オーラと呼ぶしかないものが。光ってました。

階段の上に立つDavid、お行儀よく並んで順番待ちするファン。 (このあたりがとっても日本人です) サイン、握手、会話など思い思いにリクエスト。 1人ずつに時間を取ってくれたので、 他の方とのやりとりを近くで見聞きしたわけではないのですが、 Davidはひとりひとり、ひとつひとつに対してかなり丁寧に 応じてくれていたように思います。
私はパンフレットにサインを頂き、ひとことCyranoを褒めさせてもらいました。 実は、もし、もしもDavidに“逢う”ことができたら・・・ その時は何を置いてもとにかく第一に 自分が役者David Wenhamの舞台を観たくてここまで来たのだと 伝えたいという密かな願望があったので。 (真面目に口にするのも躊躇われる、途方もない望みだったのですが)
Davidは相手が言葉を発する時は、思い切り頭を下げて傾け、近づけてくれます。 勿論、誰に対しても自然に同じように。“真摯にして紳士”です。 リアクションを返す時は一度正面に向き直ってから、 ちょっと頭を後ろに反らして眉を上げ、目を細める、あのいつものカンジです。 「O〜h、tha〜nk you〜」。うん、うん、と頷きながら破顔。 その所作が大きくゆったりなので、とても丁寧な印象を受けます。
これまで同じ人間なのだと分かっていても、つい心のどこかで 雲の上の存在のように捉えてしまっていたその人が、 軽やかに同じ立ち位置、同じ目線に降りてきてしまったような不思議な感覚で、 自分のように頼りない片言英語のファンが相手でも 自然体で“対等”に向きあう人なのだと感じられて嬉しくなります。

そのあと、握手をお願いしましたが、 その間もずっと正面から相手の目をしっかり見る方なので、 こちらもかなり照れながらも、視線を外すわけにもいかず・・・。 とりあえず開き直って笑顔で感謝の言葉を返すしかありません。 ただ同時に、「この人は本当にジェントルで良い人なんだ」、 となんだかまっとうな線でとても嬉しい気持ちになったので、 自然と口元がほころんでしまったのも事実です。
実際、確かに気さくで屈託のない人のようですが、 印象としてはざっくばらんとかフレンドリーというよりも、 むしろソフトでフェミニスト風な相対し方のような気がしました。 (なんと言えばいいのか・・・適当な表現が見つかりませんが)
まあ、彼もあれで一応(?)欧米人の男性ですし、そういえば 姉がたくさんの末っ子。別に驚くようなことではないのでしょう。 こちらがそういうのに慣れていないので、妙にどぎまぎしてしまいましたが。 ほんの短いやり取りの間に個人的に感じたことなので 実際のところがどうなのかはちょっとあやしいのですけど。

ちなみにこの時のDavidのいでたちはというと。
どこかで見たような白地に青系ペーズリー模様のシャツとブルージーンズ。 (このシャツは私服だったのか・・・と)
髪は濡れてはいなかったけど、なんというか“そのまんま”で 前髪もセットしていません。だいぶ伸びていました。髭はなし。 思ったより赤っぽく濃い髪色に見えたのは、照明の加減でしょうか。
“さっと湯通ししたところを今お鍋からあげて出してきました〜” という湯気でも立ち上りそうな出来たてほやほや風情のDavid。 ちょっと上気していた(ように見えた)からかもしれませんが、 シラノ扮装&メイクを落として多分シャワーを浴びているようだったので、 思わずそんな連想をしてしまいました。
目元の皺とかこけ気味の頬、連日のメイクのせいか肌も荒れ気味なのが目に付きます。 予想ほど色白に見えなかったのは前述の通り舞台直後で多少上気していたせいかも。 ステージ上で見た時にも思いましたが、かなり痩せてしまっていました。
昨年の来日時と雰囲気・イメージは近いのに、記憶にある像や写真と比べると少々痛々しい。 でも本人自身のオーラは明るくカラリ、サラサラ、 オーストラリアという国の気風がそのまま人柄になって現れているようなDavidです。
前髪を下ろしているのと痩せた為か、なんだかずいぶんと若く見えて、 とても四十路一歩手前とは思えない、「お兄さん」としか呼べません。
眼を細めてくしゃりと笑うので目じりの皺もしっかり全開ですが、 その分、スクリーンなどで見せるあの「素敵だけどちょっと冷えたコワイ眼差し」は すっかりどこかに引っ込んでしまっています。
肩の力が抜けていて、ほわほわと優しげ、楽しげ。 こんなに柔らかい印象の人だったかしら?と不思議な気がしました。
これがほんの数十分前までステージ上で覇気に満ちたアツい快男児Cyranoを 演じていた役者さんと同じ人だなんて。
彼の七化け振りはよく分かっているつもりでしたが、それでも何だか信じられなかったです。 面白い事に、プロの撮った写真よりもイベント時などに普通のファンが撮った ものの方がどれも実物のイメージにずっと近いです。 勿論、お疲れの様子は見て取れました。 わざわざ出てこさせて申し訳ない、でも凄く嬉しい、ありがとう。

その後Davidは「thank you」「good night」の言葉を置いて、 去り際に胸の前で両手をあわせるヘンな挨拶ポーズをして(日本式のつもり?)、 出てきた入り口から中へ・・・と思ったら、自動ドアが開きません。 ロックがかかっていて締め出し状態。 無理矢理ドアをこじ開けようったって、ダメです、Forceとか無いですから(笑) 脇の小窓から「めるろ〜ん」・・・じゃなくて、 「コンコン、おーい開けて〜」と呼びかけるDavid。 なんだか可愛い・・・いいものを見てしまったようなお得感です。 程なくして無事アンロック、改めて「good night」と手を振り戻っていくDavid。 こちらもみな笑顔で手を振ってお見送りしました。


Arts Centre


今回“正面玄関より劇場入りのDavid”にも逢うことができました。 正確には見かけた、という感じだったのですけど。 何と言っても舞台前の主演役者、しかもハードな公演日程で疲労度は最高潮の筈。 ナーバスになっているかもしれないところを煩わせるわけにはいかないので 「通り過ぎるところを見られれば幸運かな」くらいの気持ちでいたのですが。


Arts Centre
PlayhouseのあるArts Centre正面入り口


お1人様、徒歩、「おやつ」以外は手ぶらでやって来たDavid。
白地にブルーのストライプシャツ(こんな歯磨き粉があったような)に いつものブルージーンズ。 靴は・・・覚えたはずなのに忘れてしまいましたが、とにかく普通っぽかったはず。 多分黒か茶色の革系。サングラスつき。 ちなみにこの時のグラスは、最近ちょっと話題になったSWANS観戦時の あの怪し気なものではなく、ごくスタンダードな形だったかと。 ちゃんとカッコよかったですとも(笑) コーヒーのフタ付カップをひじで挟むという器用な持ち方、袋をさげ (中身はバナナだったらしい)大またなストライドですたすたさっさっと歩いて来ました。 何かを思いだすような・・・と思ったら、「3$の壁紙」でした。まさにそのまんまアレです。

この時は手紙を渡すことができまして、とにかく受け取ってもらえさえすれば それでいい、と思っていたのですが、彼は意外なくらい明るく屈託無げでした。 実にテンションの安定している人なんですね。感服。 再び例の大きなリアクションで「ありがとう」。 舞台の感想をもう少しちゃんと伝えたくて書いたものでしたが、 拙い英語手紙に改まって謝意を示されてしまって恐縮。 「今日の公演も楽しみにしています」と言うと、 「ありがとう、楽しんで」と返してくれました。 なんだか肩の力が抜けて楽しい気分になりました。Davidの人徳ですね。


Arts Centre


・閑話休題
今回の観劇の隠れた醍醐味、Cyrano出演役者さんや通りすがりの現地の方 との会話。実に気さくに楽しい方がたくさんでした。 個人的に「アーモンドタルトの詩」が素敵なRaguenaeu役者さんを気に入ってまして、 少しお話してしまいました。 お名前を覚えていなかったので「Monsieur Ragueneau?」と声をかけたら、 「Ye〜s」おお、やっぱり。「詩がとっても素敵、気に入った」と賞賛させていただいて、 「機会があったら、他のスタッフ・キャスト皆様にも私が舞台を楽しんだと伝えて欲しい」 と言うと「OK、勿論」と受けあってくれました。 ソフトなハスキーヴィオスが優しげな素敵なおじ様でした。 Davidの場合と違ってゆっくり考えながら話せるのがいいなあ。楽しかったです(笑)


Arts Centre


最終公演は至ってシンプルに幕を下ろしました。 カーテンコールが一回多くて、歓声が多めで、ちらほらスタンディングがあったくらい。 主たるスタッフくらいは登場するかと思ったのですが、これが普通なんでしょうか。

やっぱりできれば最後にもうひと目、Davidを見納めしたいと待ってみました。 stagedoor付近はやや人出も多め。 これで最後だし、来てくれそうかな?と思っていたら、 にこやかに出て来てくれました。 この日は2公演もこなしていて、特に最終公演の終盤あたりなどは 何か気迫とか余情のようなものが伝わって来たくらいの入魂ぶり。 相当お疲れの筈ですが、なんとなくナチュラルハイというかうきうきとご機嫌? 無事にフィナーレを迎えられたし、思いがけずほどほどの人数のファンに “きゃ〜”と騒がれて、案外まんざらでもないとか。 希望的観測?いや、ホントにそんな風にしか見えなかったんですけど。

この時は一歩下がったところからのんびりDavid見物しました。 既に舞台の時にもオペラグラスで確認済ですが、実物Davidの目が どんな色なのかを近くで見極めたいという、これもまた密かな野望があったので。 人工の照明を浴びると予想通り、光を透かす硬質な水の色、アイスブルーの虹彩。 そしてコバルトといっていいくらい濃いブルーグレイの瞳。 今は周りが暗いので少し翳を帯びた色合いに見えます。 たまにペールぽいグリーンがかかって見える画像などがあるのですが、 どうもこれは明るい自然光にあたった時だけそう見えるものらしいですね。

今回も丁寧に応対してくれたDavidのお陰で自然と和やかな雰囲気です。 退場間際についするりと出たのか、「SEE YOU IN JAPAN」の言葉。 ばっちり聴きましたよ。そんなこと言ってしまっていいのでしょうか?(笑) でももし実現したら、HOTなファンに歓待されること間違いなしですから、 ぜひ期待して来て欲しいものです。できれば今度は気候のよい時期に。

階段を上がってドアの方に戻りながら振り返って投げKISS×3のサービス。 こういう時はさすがに自然で絵になります。いやもう、本当にかっこいい。 扉の向こうに消える直前、私の知る限りでは一番イケている(!)日本語で「アリガトウ」。 (他にもちょっとした日本語で声をかけてくる人もいたし、スタッフかキャストに 話せる人がいたのかもしれませんね) 最後の一瞬まで全く申し分ないです、David。ホントに素晴らしい。

おまけ。
彼はすっかり大荷物になったファンからのプレゼントや手紙、花束などを ちゃんとお持ち帰りしていました。きっちりそのQualityを示されています。
超個人的な先入観ですが、David Wenhamという人は、 プロの俳優、スペシャリストとしての自分が認められ、演技が評価される事に価値を 置いても、ファンというものに対してはもう少しクールな反応をするのではないか? というイメージがありました。
勿論基本的に良い人なのだろうとも思ってはいましたが、こんなにホットに愉しげに ファンサービスをしてくれるとは正直意外で嬉しい驚きでした。
Davidにとっては半ばnative townと言ってもいいメルボルンというロケーションですから、 リラックスして楽しんで舞台を演っていたところで、はるばる日本からこれを観に やって来たファンに対して、自然とサービス精神が発揮されたのかもしれません。 それに、映画撮影期間中などはその役が入り込んできて素のキャラまでが影響される という彼のことですから、もしかしたらフェミニストなMonsieur Cyranoが入っていたのかも? そうだとしたら、コワい役柄でなくて本当によかったです(笑)


素晴らしい舞台と、素敵な人柄を見せてくれたDAVID WENHAM氏のPANACHEに敬意と感謝を。

嫦娥 2005.5.14記