Actors

Sean Astin :Samwise Gamgee



なんだかカッコイイサム、というのが第一印象です。でももちろんきちんと、フロドへの忠実さや誠実さ、 とか出ていいなあ、ですけれども。 原作のサムはひたすらフロドへの献身と愛でもって愚直にちかくモルドールについていく印象ですが、 ショーン・Aのサムはフロドへの献身と愛は当然として、でも指輪の事とかモルドールへ行く事の意味とか ある程度分かってついていくというような印象あります。言ってみればインテリジェンスをカンジさせるサムというか。 これは実年齢がフロドより10才ほど上のせいか、はたまた本人の持っている雰囲気のせいなのかな。 なんというか旅の最初っから「お共するサム」じゃなくて 「共に進むサム」という印象でした。この先のモルドール行の描写いかんによってまた印象も変わってくるとは思います。 凛々しいサムで良いんですけどね。この先第2部3部とよりかっこよさが増していくであろうサムに期待です。03/02/03

Sean Bean :Boromir

完敗です。ボロミアがこんなに情けの篤い、素晴らしい人だった、というのには。脚本と演出にやられ、彼の演技にやられ、 いやもう素晴らしい。指輪に惑わされる所も、ホビットたちを気遣う所も、アラゴルンと対立するところも、いいですね〜 彼のラストシーンは何度みても胸にクルものがあります。ゴンドールの執政の息子である、という威厳とプライド、 父、デネソール、弟ファラミア、ゴンドールの民と部下たちから愛された男、というのがごく自然に伝わってきました。 ピピンがボロミアの事をデネソールに語る時、よりいっそう哀しみが強まるだろうなとしみじみしてしまいます。 二つの塔以降は回想シーンのみの出演になるのがちょっぴり残念です。でもここまでボロミアを強い印象で 撮った事で、アラゴルンの王への決意や、今度出てくるゴンドールの状況が深まって理解されるのではないかと期待しています。 03/02/16

Orlando Bloom :Legloas

弓連射カッコイイ! 身のこなしが流れるようでいかにもエルフらしい! 軽やかで、優雅な動きが、実はそれほどセリフが 多くない彼の印象をひどく良くしているような気がします。もちろん弓攻撃がばしばしに強いのもその理由の一つではありますが。 でもこれがどこかもたもたしていたら「ちっともレゴラスじゃない」って事になったと思うのです。 闇の森のエルフである彼は、原作でも、どこか退廃の匂いのする裂け谷やロスロリアンのエルフたちとは雰囲気が違って いたような気がしましたが、映画の彼も裂け谷ともロリアンとも違ったエルフを見せてくれて素晴らしかったです。 ギムリとの友情の深め具合や、二つの塔以降での働きぶり、それから海鳥の声に「呼ばれて」しまう所をどう見せてくれるかなあ・・・ 03/02/16

Billy Boyd: Peregrin Took :Legloas

お人形さんみたいな顔だちでピピンの性格ともあいまって可愛らしいです。 彼が旅の仲間のホビット4人のうちで一番年長というのがちょっとびっくりですが。 ひそかにドミニクと8才、イライジャと13才も違うかと思うと・・・ インタビューでの彼も陽気でお茶目そうでキュート。今からゴンドールのお小姓姿に 期待してるのですが、きっとラブリーに違いない。 BBCのインタビューでオーランドが一番セクシーって言われてるけど? の質問に、「僕らだってハンサムさ!」って言ってます。
we're handsome for God's sake. [points to Dominic] Look how pretty this man is! (イタリック体引用)
こういう時、男の人にもprettyって 使うもんかね(笑)ホビットだからあえて使ったのかな?
03/02/04

Bernard Hill :Theoden

映画の第一印象は原作で想像していた以上に若々しいな〜でした。グリマに毒されていた時の事は別ですが。 更正した後の端然とした姿はとにかく格好良かったです。思慮深く、民への情けにあふれ、臣下を そして、息子と甥と姪を愛する王。さまざまな局面でそれが見せられていて、本当に情愛深い王様なんだ な〜という感じが伝わってきました。
「この先」を思うとちょっと涙ものだな・・と思うのですが、またヒル氏がどのようにその時のセオデン王を 演じるかという楽しみでもあります。 03/07/23

Ian Holm :Bilbo Baggins

陽気で賢く情け深いホビットのビルボ。本当にビルボらしいビルボで感動的でした。フロドに対するどこか不器用な愛情の 発露も(selfishだから、なんてそんな偽悪的に言わなくてもいいのに、と思ったくらいです)ガンダルフとの友愛も素晴らしく見せられて感動的でした。 持ちの良い人が裂け谷で時にさらされて年老いていたのも、映像で見せられるとそうか、こういう事か、と痛ましさを感じました。そして、フロドの指輪を目にして負の感情を表情に出してしまった所も、怖いというより痛々しくて哀しかったです。しかし裂け谷での、 ちょこんとベンチに腰掛けていたビルボは非常にらぶりーでした。 できれば裂け谷でエルフと仲良しなビルボとか、馳夫さんと仲良しなビルボとかも見たかったのですが、はい分かってます。 ないものねだりです。 03/02/18

Chirstopher Lee :Saruman

その声の麗しさ、細く長い形の良い指、優雅な身のこなし、あふれる知性、おステキすぎます、サルマンさま。 クリストファー・リーという役者が全身全霊かけて演じているこのサルマンはこの先彼以外の人がサルマンを やれるとは思えないほどです。 それでいてガンダルフとのがっつんバトルもこなしてしまう力強さ。何もかもがサルマンさまです。 原作読んだ時はサルマン「さま」なんて思いもしなかったのに映画を見てからはサルマン「さま」。 強大で力にあふれる(それが邪な力だとしても)彼に惹きつけられてしまいます。サルマンがここまで魅力的だとは! 魅力的で声に説得力があるからこそのサルマンな訳ですが。 そんな彼が堕ちていくさまがどう描かれていくのか楽しみ楽しみです。 03/02/18

John Leigh :Hama

原作で持っていたイメージよりも優しそう、柔らかそう、と思って見ていました。その上 あっさり逝ってしまわれたのがなんとも痛恨のキャラクター。ええっ? もう? ってヘルム渓谷にたどりついてないようううううう! とか。 その一方でギャムリングが滅法格好良く描かれているような気がするのは気のせいでしょうか・・ いえカッコイイギャムリングは素敵でしたけれども。映画ではなんだか、ギャムリングの方が近衛隊長みたいでした。 最終戦前にハマの息子が出ていました。(映画オリジナルと思われます)名前がハレスというのは、 槌手王ヘルムの息子から名前を取ったのでしょうか、ヘルム王の息子ハマとハレスは王より先に戦死して しまいましたが、あのハレス君には生き延びて、エオメルに仕えて欲しいなあ、と思いました。 03/08/04

Lawrence Makoare:Lurtz

映画オリジナルのキャラクター、ウルク=ハイの頭領のようです。憎々しげな表情でボロミアをやってくれる 敵方。見るたんび来るな〜〜!!! って思っちゃいます。 ラーツを演じた彼はアングマールの魔王の役もキャスティングされているようで、・・・今度は彼をアレするの ですね・・・でもメークアップが大変だそうでご苦労さまです。 03/02/18

Ian McKellen :Gandalf

映画でもその存在感が素晴らしい。原作を読んだ時はもっと地に足着いてないビミョウな印象がありましたが、 サルマンとのガッツンガッツンバトルといい、モリアでのオークなぎ倒しまくりといい、まさに武闘派イスタリの名前を 欲しいままにしております。むちゃくちゃ強えぇ・・・。 フロドに対してはすっかりお祖父ちゃんというか保護者と化してますが、あの映画フロドではしょうがないのかな? もう少し「年若の友人」という雰囲気を出して欲しかったような気もしますがまあそれはないものねだりという事で。 サー・イアン・マッケランの厳しさと優しさの表情の揺れがまた絶妙で素晴らしい。 まさしく「ガンダルフがいる〜〜〜」だったのには感動でした。 03/02/08

Dominic Monaghan :Meriadoc Brandybuck

原作で凛々しかったメリーは映画でも凛々しかったです。 うーん可愛くてカッコイイ。 どうもホビットという役柄のせいか、愛らしさを感じてしまうのですが、 実際はオーランドより一才年上。素の役者さんたちの顔を見るとああ年齢なりの顔、と 思うのですが、役にはいると役の年になるっていうのは当たり前のようですごいような。 まあでも実際撮影開始時は23才くらいでで映画のメンバーとしてはかなり若い方ですね。 03/02/04

Viggo Mortensen :Aragorn

感激です、脱帽です、ステキすぎです。原作のアラゴルンそのままかと言われたら、正直違う、と言いますが、 じゃあダメなのと? と言われたら全然ダメじゃないすっごいイイ!と言います。一回目を見た時は王であることを 迷わない原作アラゴルンと、王の血が・・・と迷いに迷っている映画アラゴルンとの間の違和感(それに原作のイメージしていたより優男風だ〜というのもあったり・・)にちょっと違うかも、と思わないでもなかったのですが、映画は映画として魅力的なアラゴルンであることに間違いはなく、 どんどん彼のアラゴルンにはまっていきました。
うさんくさい所も、迷って引き気味の所も、強い所も、彼が演じてくれて良かった〜としみじみ思います。すっかり映画でも王様スキーになってしまいました。もうほれぼれしてしまいます。いやーいい男だ〜。彼のうにゃうにゃした喋りにさえ愛を感じてしまう今日この頃・・野伏な彼が果たして王様になった時にどんなカッコイイ王様姿を見せてくれるかと思うと今から楽しみです 03/02/16

Craig Parker :Haldir

原作よりずっと印象深い様子に少し驚きました。彼と、そしてあのエルフの援軍とで、「エルフも闘うんだ」 というイメージがしっかりつきました。何故かしらエルフのイメージではああいった肉弾戦というのがなかったのですが、折り重なって死んでいく様子に、エルフも決して肉体の死から逃れ得ないのだという現実を再認識させられた感じです。ハルディアの肉体は滅びましたが、エルフとしては魂は滅びずにマンドスに行ったのでしょうから、いずれまたそこからの新しいはじまりが待っているのだと思うと、悲しんでだけいなくても良いのかなと少し思いました。 03/07/23

John Rhys-Davies :Gimli

割と乱暴な感じのギムリに見えました。映画のギムリはそういうギムリなんだろうな、とは思いましたが。 原作を読んだときにイメージしていた彼は、ドワーフにしては割と繊細な感じなんだろうなと思っていたので。 ちょっと単純そうでバカっぽそうな(失礼)映画の彼の方が、逆にエルフと対比されて、これまでずっと仲の 悪かったエルフと友人になる、というのが生きてくるという事なのかもしれない、と思っています。 Fellowshipでは少し陰が薄かったですが二つの塔ではがんがん働くでしょうし、そのへんが楽しみです。 03/02/16

Karl Urban :Eomer

マークの国の王の甥にして軍団長。後のローハン王、という役所にすっかりハマっているように 見えました。短い出番ながら、その勇猛さ、義侠心といったものがこちらにせまってきます。 ペレンノール野の合戦で、王を失う悲嘆や、激しい怒りのままに闘うシーンがどんな風に猛々しく、 また勇ましく描かれて行くのか、アラゴルンとの友誼がどう表されるか、楽しみです。 03/06/30

Hugo Weaving: Elrond

強そうな人だ、というのが第一印象でした。精神的にも肉体的にも強そう、という風に。指輪では彼自身が闘う部分が ないせいかイメージとして文人的な印象を持っていたのですが、原作を読み返してみると、 ”力に満ちあふれた百戦錬磨の戦士のように強健でした” とあるのであのぐらい強そうに見えてもいいのかな、と改めて思いました。実際、彼は指輪戦争の時代のはるか昔に自ら闘っていた訳ですし。 そのくせ妙におちゃめさんな印象があるのは演じた彼の持つ部分かな? メリーとピピンが会議に乱入してくるところの 彼の少しあきれたような、しかし一方で喜んでいる表情がそんな風に見えました。 彼の、愛するものとの別離という苦悩を、これからどう見せてくれるのかが楽しみです。 03/02/18

David Wenham :Faramir

ファラミアについては別項で。RotKとあわせて評価したいです。彼のファラミアは。 そこここでトレイラーを見ているうちにすっかりデヴィッド・ウェナム萌えになりました。 だってカッコイイんだもん。ファラミア役を見た段階でもいいな〜とか思っていましたが、 いろいろな役柄を見るとそっちもいいなあと。ということで彼については別館" The boy from Aus."でかたっております。
david wenham fan site 13/Jan/25

Elijah Wood :Frodo Baggins

彼のフロドを見た時、一番目の感想は「若い」「可愛い」でした。そして「繊細そう」かな。素朴なホビット族というものからは容貌的に離れている彼だけれど、逆にその浮き上がった所がフロドらしいとも言えそうで、映画フロドとして彼がどんな風に動いてみせてくれるのかどきどきしました。いっぱいに見開いた瞳に映る愛情や恐怖、喜びと悲しみがあますところなくこちらに伝わってきてせつなくなってきました。
ホビットとしては成人を迎えたとは言っても、人間からの見た目が少年のような彼(映画では33才の誕生祝いから半年くらいで旅立つ設定のようです)が最も暗い旅路を終えてなお故郷に安住できない運命を持つに至るという事を考えた時に、より悲劇感が際だつような気がします。 Fotrではまだそれほど指輪からの圧力を感じていない彼ですが、今後指輪の陰の影響を強く受け出すにあたってイライジャがその様子をどんな風に演じてくれるのか今からとても楽しみです。03/02/01

Actresses

Cate Blanchett: Galadriel

劇場公開時の時の印象はエルフの女王という威厳はたっぷりだけど、もっとたおやかで優しい印象があったのにな〜 でした。SEEでそのたおやかさや優しさ、朝の光の美しさが追加されたので、バランスが取れて良くなったな〜 と感じています。美しいだけでなくやはり懼れを感じさせる部分がないと、彼女ではない、と思います。 そして懼れだけでもいけない、と。その意味でSEE版のガラドリエルは素晴らしく描かれていると思います。 彼女のサウロンに対抗する様子は映画では描かれるのかな・・ 03/02/18

Robyn Malcolm :Morwen

ほんの少し出てくるだけなのですが、とても自分的には印象的な方です。役柄としては映画オリジナルで 幼い兄妹をエドラスへ送り西の谷への襲撃を報せる役目です。せまりくる敵手への恐れを隠し、兄妹たちを送りだすシーンは 緊張感にあふれ、また馬で行く子ども達の見送り、その安否を気遣う、一瞬の無防備な表情が、とても自然な母子の情景に見えました。
ヘルム渓谷で子ども達と再会しますが、そこにいたる場面がしっかり想像できた所が良かったです。 ヘルム渓谷へエドラスから王をはじめみなが集ってくる、という先触れはあったでしょうから、子ども達が無事にエドラスへ着いたであろうことを、知り、それでも、実際にその手に抱くまでは安心できず、ようやっと砦内で巡り会えた。その不安の中の安堵が小さな点景として砦内部に描かれていた所がしんみりしました。
the onering.netのキャラクター紹介では 村の指導者であろう、となっています。個人的には、彼女が指導者、というよりはもともとは彼女の夫が指導者で 夫がこれまでの戦闘で死んだか、もしくはエオメル旗下にあって村を離れているがために代理をしている、 というような雰囲気を感じました。フカヨミしすぎかな? どちらにせよ、彼女があの時点での村の指導的立場にいたからこそ、彼女は、兄妹をエドラスに送らなければならなかったのでしょう。家族で逃げられるならその方がどんなに安心だったろうかと思ったりもしました。ローハンの人たち、特にヘルム渓谷で描かれる人々は己の役分から逃げる事なく果たしているように描かれているな、と思いました。 03/07/29

Miranda Otto :Eowyn

この人のエオウィンは「乙女」属性が自然に出ていてとても好感が持てました。 洗練されすぎていず、凛々しく、そして微笑みの愛らしい、騎馬の民の姫、というのが伝わってきました。 アラゴルンへの淡い思慕、また、自分を取り囲む閉塞的な状況への反発、若さと、頑なさと、意志の強さが うまく混じり合ってエオウィンを創り上げているように思えました。 王の帰還での彼女の闘い、その絶望と、再生がどう描かれるかがとても楽しみです。 03/06/30

Liv Tyler :Arwen

・・・映画版アルウェン、ははっきり原作とは扱いが違っているので、彼女に関しては原作と比較したりするのは、実は 無謀な事かもしれません。良くも悪くも印象的な初登場をしています。 私としては最終的には某2箇所がひっかかるのみなりました。裂け谷でアラゴルンを見つめる彼女はとても美しく、 最初っからこの路線でいってくれれば良かったのに・・・と思ってもしょうがないことを考えてみたり。 ホースチェイスもラブシーンも別に良かったのです。気になったのは初登場時のいきなり刀つきつけと、ナズグルに 啖呵を切るところ。なんだかどっちも自分の思うエルフらしさから離れていて、もっとエルフらしく登場して欲しかったなあ と。ネット上で映画のアルウェンが強いのはシルマリルの物語のルシアンのイメージが投影されているためではないだろうか、という コメントをしている方がありました。言われてみればルシアンはベレンをおっかけてモルゴスと対峙するような強いお方。 ベレンとルシアンが、アラゴルンとアルウェンに投影されているとすればこういう事になるのかもしれません。 (・・・でも刀つきつけは勘弁して欲しかったよう・・)二つの塔以降ではどう彼女が描かれていくのか興味深々です。 03/02/18

他出演作品感想

柔らかい殻

原題:The Reflecting Skin/1990年イギリス
監督・脚本 フィリップ・リドリー
出演 ジェレミー・クーパー;リンゼイ・ダンカン;ヴィゴー・モーテンセン;その他


時代は1950年代。アイダホの田舎町に住む少年セスは隣家の未亡人の話を聞いて以来、彼女が吸血鬼ではないかと怖れている。そんな中、少年の殺害事件が起こり、町が異常な空気に陥っていく。殺人の容疑をかけられる父。自殺。母の妄執。少年の敬愛する兄、キャメロンの兵役からの帰還。続く殺人事件。キャメロンの恋とセスの焦燥。そして何もしないこと、ただ見ている事の残酷さ。
話の筋立てを、と思って書き出してみたのですが、どんな話なのか、とても説明しにくい映画です。

扱っている中身が、快楽殺人、近親者の自殺、同性愛、被爆、核実験、戦争の影・・・と、とにかくこんなに重いものをてんこもりにしてどうするんだ・・と言いたくなるような重いテーマ満載の映画でした。 この重たい上に重たいテーマ、事象が、次々に起こってくるのですが、それが「子どもの視点」から淡々と撮られています。またその「こどもの視点」というのがくわせもので、「ひどくフィルターがかかっている視点」という感じがしました。それは例えば、「夜、風が家の窓を揺らす、ただの音」が子どもには「自分を捕まえどこかに連れ去る化け物の足音」に聞こえるような、そんなフィルターというか。 いろんな物事が子どものそのフィルター越しに捕らえられていて、「ティーン以前のこども」が良くわからずに大人たちの言葉を聞いていて、そのこどもの知り得るものしか観客には与えられず、結局、観客である大人たちはその台詞のはしばしから何がこの場で起こっているのか起ころうとしているのか図るしかない。およその所が察せられるようになっているとはいえ、それも曖昧で、もどかしくて、その視点の「普通の大人からのずれ」に違和感を覚えてしまう。
少年の目を通してうつされたアイダホの麦畑は広く空は青く、それだけの筈なのに、少年の目は隣家の女性をただ人でなく異形のものとして捕らえ、また大人の目からは異形である筈の赤ん坊の死骸を天使の遺骸にしつらえる。また少年が崇拝する兄は粗雑で乱暴なのに美しく、他の大人たちはどこか醜い。

この映画は一体なんなんだろう、と思うのですが、一つ思った事は「アメリカの負の記憶」なのかな? とと言うことです。1950年代といえば、アメリカ経済の大繁栄。グッドオールドデイズ。ドラマはローンレンジャーやアイラブルーシー。郊外にのびる宅地、家庭に入る電化製品。大きな車、ロックンロール。そう語られる表の、陽のそれではなくて。
第二次大戦が終わっておよそ10年、朝鮮戦争が終わってまだ1年足らず。まだ戦争の影は消えていなくて、兵たちが復員してきた時期で、決してテレビがうたうほどの夢がある訳でなく、犯罪も消えておらず、むしろ増えて、そしてこの時期アメリカは_(そして他の国も)がんがん核実験をやっていた。キャメロンが被爆したであろうビキニ環礁においても、(台詞のはしばしからそれは語られています)映画の舞台であるアイダホ州の南隣りのネバダ州でも。そしてその暗い過去は、アメリカとしてはおよそ意識されずに過ごされてきている。

そしてもう一つは1990年に撮られたから、という訳でもないでしょうけれど、少年のフィルターを通している、といって、それが同時代的にシンクロしているのではなく、どこか「かつての少年の記憶をそのまま思い起こしたなりに映像化した」ようにも思えるのです。
虚実がないまぜになったような怪しい人物たちも、いつまでも残る違和感もそのせいなのではないか、とか。
殺人犯の正体も、この映画では示唆されはしていますが、本当に少年たちを殺したのが誰なのかは、はっきりとは明言されていません。ひょっとしたら「少年だけが感づいている犯人」は、少年が見た白昼夢なのかもしれない、と思えたりもするのです。

原因も要因も仮定も結果も、ただこうであるかもしれない、とだけの映像と言葉を放り出され、そして事実として人が死んでいく、かなり居心地の悪い映画でありますが、それがいつまでも 心に残って、・・・もう一回見ようかな〜とふと思わされた映画でもありました。

ヴィゴ氏狙いで見た映画でしたが、ヴィゴは主人公の少年ので、おそらく、マーシャル諸島帰りの復員兵で、時期的に原水爆実験に参加しており、映像と台詞の端々から彼が被爆している事が伝わってきます。ヴィゴは、彼の身体に表れる放射線の症状に少なからず脅え、苛立ち、家族の状況とまわりの状況に苛立ち、そういった中で隣家の未亡人に引き寄せられる若者を好演しています。黒スーツに白開襟シャツ、若い、細い!

けだるげに、遠い目で兵役中にあった「雪のように白くつもる」死の灰を語るシーンや、ラスト近くの身を切られるような切ない慟哭は、凄まじくも美しく撮られていました。

しかし謎が謎のままで終わりすぎの映画とも言えました・・そういう映画として見るしかないのだろうけど、 あの双子の中年女性は何? 結局未亡人の夫の自殺の原因は何? 保安官が言う「それは キスからはじまったこと」というのはいったい何だったんだ〜〜とかそれはもういろいろいろいろ。 ラストも「嘘〜ここで終わり〜」とちょっぴり泣きが入ったことを秘やかに告白しておきます。 03/07/21

King Artur and the knights of the Round Table / NAXOS audio books

naxos社というオーディオブックの会社が出しているjunior classicsというラインの一作です。朗読、ショーン・ビーン
naxos社のコンセプトは Classic Literature with Classical Musicという事で、いろんなラインを出していますがこのjunior classicsに入っている作品は、 「赤毛のアン」、「若草物語」、「王子と乞食」、「ロビンフッド」 「秘密の花園」、「宝島」、「オズの魔法使い」 「ギリシア神話」、「ピーターパン」、「不思議の国アリス」、「ジャングルブック」、「トムソーヤの冒険」等が入っているので、 世界少年少女文学全集というノリでしょうか? (でも「アーサー王宮廷のヤンキー」が入ってる所はちと笑えます)

ものがアーサー王伝説ですから、全部の文章を聞き取れなくても、大体の筋を分かって追う事ができました。

CDの一枚目は若い王であるアーサーが、2枚目は壮年からのアーサーが演じ分けられてこれがまた素晴らしいです。
剣を石からさっくり抜いて、育てのお父さんからいきなりmy load って呼びかけられてどぎまぎする 風の従者なアーサーとか、 ギネヴィアに一目ぼれするところ - 本当に心を奪われた・・という感で、"How beautiful..."というセリフを繰り返し呟くところとか、が良かったです。 マーリンがやめとけ、って言ってるのにギネヴィアをお后にしたいってごねる(ごねてるように聞こえたのだ(^^;)) 所がまた若造くさくて可愛いです。

その一方で2枚目のCDでランスロットとギネヴィアの道ならぬ恋が明らかにされた後でアーサーが苦悩する あたりは秀逸で、とりわけ、ランスロットを討つべきだと激昂する(してみせてるのかもしれませんが)モルドレッド に対して、”私の王国はもうばらばらになっているのだ・・・”と失意に満ちた口調で呟くように言う所など、 しんみりしてきます。

モルドレッドとの最後の闘いから最終章に至る3章はかなり胸に来るものがありました。 死に瀕したアーサー王がエクスカリバーを湖に返させ、その湖から王に、アヴァロンへの迎えの舟が来る。 そして、ラストの”...Arthur the once and future King ” CD2枚でおよそ2時間半、聞き応えたっぷりでした。

いやもうなんだか”my load” とアーサー王に呼びかけるのを、 ショーンの声で聞いてるだけで幸せになってくるのは いけませんかもです。・・・・ミーハー的にはショーン・ビーンのじじい声、親父声、若人声、レディ声が楽しめて 大変楽しくお得感の高いCDです。

cover
04/05/03アマゾンアソシエイトプログラム参加につきジャケット画像追加

リベリオン

原題:Equilibrium/2002年アメリカ
監督・脚本 カート・ウィマー
出演 クリスチャン・ベール;エミリー・ワトソン ;その他


話としては近未来管理社会もの。第3次大戦後にわずかに生き残った人類が戦争を防ぐために、残虐性の根源となる欲望、怒り、喜びなどすべての感情を抑制し、心の平衡を保つようにしようという社会が構築される。その社会はファザーと呼ばれる執政者によって 取り仕切られ、また感情抑制のためにプロジウムという薬物を毎日摂取しなければならない。 感情を揺り動かす芸術や嗜好品は厳しく禁じられ、持っているだけで処罰の対象になる。 この禁制品の所持者や、現政権のレジスタンスたちを取り締まるのが、政府直属組織の「クレリック」とよばれる取締官。 クレリックであり特殊な武道「ガン=カタ」の達人の主人公が、誤ってプロジウムを打ち忘れたこと、同僚の死など から感情に目覚め変わっていく……という物語。

モノを考えるなではなく、強く感じるな、である。それはある部分とても中途半端な世界観であるし、話は こういった管理未来ものとしてはありきたりで目新しいストーリーな訳でもないし、微妙にアラも目立つ映画 だったのだけれど、静と動がうまく描かれていて、とても魅力的な映画です。 それは特殊武道のガン=カタ(GUN=KATA)だったり、主人公の感情の発露がとても丁寧に描かれている処だったりします。

の部分のメインアクションである、ガン=カタは「東洋系武術と拳銃技術を組み合わせた最強の格闘技」だそうで、「攻撃と防御が一体化した格闘技」 という設定らしいです。アクション好き、拳銃好きにはたまらんモノみたいですが、そういう属性がない私が見ても 目を惹かれます。ただ見得の切り具合とか、あまりにも状況無視しきったような弾のよけっぷりとかがあと半歩ずれた アクションだったらギャグになるんじゃないか、というギリギリのラインでそれでも何故かカッコイイと思わせてしまう、 私的にはバカアクション系且つカッコイイ系アクションでした。

そしてもう一方のの部分。
それは例えば、廃墟の教会で、禁制品のイェーツの詩が朗読される静かな場面や、その廃墟にステンドグラス越しに 入ってくる陽の光(それはおよそモノトーンで撮られている画面の中でひときわ美しく感じられる)といった映像ですが、 何より主人公の感情の発露の表現がとても良かったのです。主人公は最初は事故で感情抑制のクスリを打ち損なうのですが、 次第に自分の意志でクスリを打つのをやめます。そのことで感情がどんどん露わになっていくのですが、その感情の 表れが、単純に言葉で表現されるのでなく、その行動で描かれていくのです。「美しい」とか「哀しい」とか 「こんな事はイヤダ」と簡単に言ってしまわない。例えば、今までずっとはめていた手袋を外して、素手で 触れる事を感じようとしているシーン、例えば自分の手袋と銃についた血にたじろぐシーン(最初の登場シーンで 無慈悲にレジスタンスを銃殺していた時との対比がはっきりしています)、例えば禁制品に心を動かされるシーン、 数年前に処刑された妻を思い起こすシーンで描かれていく。それがとても丁寧に撮られていて、こちらの胸をうってくるのです。

主人公役のクリスチャンベールの目の動きがとても良くて、泳ぐようなためらうような動きで、自分を襲う感情に戸惑っている 様子がこちらに伝わってきました。
ヒロインとの交流も抑制された感情下でのせつない美しいモノで、抱き合って、キスというような紋切り型のラブシーン は一ミリもないいさぎよさが良かったです。

この映画でショーン・ビーンはパートリッジという主人公の同僚で、(ちょっと先輩風) レジスタンスと通じていて主人公に処刑されてしまう役を演じています。出番自体は短いのですが、とても 重要な役どころで、彼の死と、その死の間際の彼の言葉、いわば彼の残した揺さぶりが主人公に大きく影響します。 ショーンはこのパートリッジの静けさと諦念、彼の主人公に対する影響の強さといったものを説得力のある演技でみせています。 とても印象的でした。おしむらくはアクションシーンがなかった事。せっかくクレリックなんだからガンカタ見せて 欲しかったな〜、すっごく決まったと思ったのですが。03/04/20

日本版
cover リージョン2。監督コメンタリー、ライナーノーツ、トレイラーなど
US版
cover リージョン1。Closed-caption有り、監督コメントなど。
仏版
a:
リージョン2。仏語吹き替え、字幕
b:
リージョン2。監督コメンタリ、メイキング、フォトギャラリー。仏語吹き替え、字幕
独版
cover リージョン2。独語吹き替え、字幕

英版
cover リージョン2
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